無敗の選手と、すでに負けたことのある選手を、同じ条件で並べました。
ボクシングで最も高く売られる数字は、勝った数でも、KOの数でもありません。負けの欄の「ゼロ」です。守るべきものとして語られ、守るために試合が選ばれます。
では、その「ゼロ」は実際に何を予告しているのか。対象は1970年以降、デビューから始まる戦績表を持つ選手が、5戦以上の相手と戦って決着した試合。無敗側が5,847コーナー行、既敗側が13,258コーナー行です。
まず、そのままの勝率を見ます。無敗のまま迎えた試合を、その時点での無敗記録の長さで分けたものです。
コーナー行とは「ひとつの試合の片側」で、一試合が二行になります。試合数ではありません。
全体で80.3%。高い数字ですが、これは何も言っていません。強いから無敗なのであって、無敗だから強いのかどうかは、この表には書いてありません。
最も短い帯は、まだ数試合しかしていない選手です。レートがほとんど動いていないので、以降の主張には使いません。
このサイトは試合前に勝率を出しています。それと比べれば、「強いから勝つ」分は既に引かれています。残った分が、レートが見逃したものです。
無敗は予測を+12.3上回り、既敗は-1.4。差は13.7ポイント。意味のない分割(日付と選手名のハッシュ)で同じことをすると、開きは0.00と0.50しか出ません。
括弧内はコーナー行数。
相手の最低前戦数を変えても、差は残ります(+10.8〜+14.9)。この群間の差だけは、どの切り方でも崩れません。
最初に出る反論はこれです。無敗を保っているのは、勝てる相手を選んでいるからだ。
逆でした。相手の平均レートは1524.4から2153.4へ、平均前戦数は10.8から28.9へ上がります。無敗が長い選手ほど、相手は強くなっています。
括弧内はコーナー行数。
レート差を揃えても同じです。五つの帯すべてで差は同じ向き、+8.8から+23.1まで。最も大きいのは互角の帯で+23.1です。
無敗の選手は、定義上いま連勝中です。では、既敗の選手も同じ長さの連勝中なら、同じだけ予測を上回るのでしょうか。
括弧内はコーナー行数。
差は+25.3から+5.4へ縮みます。無敗プレミアムの大半は、「いま連勝中である」ことで説明がつきます。ただし、ゼロにはなりません。同じ長さの連勝どうしで比べても、一度も負けていない側がまだ上回ります。
次の反論は、「無敗なのではなく、レートがまだその男をよく知らないだけだ」です。RD を揃えて並べます。いちばん下の帯の既敗側は38コーナー行しかなく、しきい値の30をわずかに超えただけの薄いセルです。
括弧内はコーナー行数。行数が30に満たないセルは、測れていないものとして扱います。
相手の最低前戦数を5戦やそれ以上に取ると、四帯とも同じ向きになります。ところが、最も大きな母集団である下限なし(32,668と42,822コーナー行)では、4帯のうち2帯が符号を反転させます(+10.1、+5.1、-1.6、-7.7)。
どちらが正しいかを決める材料は、このデータにはありません。だからこの記事は「RD を揃えても差が残る」とは書きません。群間の差そのものはどの切り方でも残りますが、RD を揃えた版は残りません。これを書かないことが、この記事の結論の一部です。
前の記事で、ブランク明けの選手をこのサイトのレートは甘く見ていました。長く休んだ選手は、予測より負けていた。
ここでは逆です。無敗の選手を辛く見ている。方向は逆ですが、同じ欠陥の裏表です。
レートは過去からしか作られません。だから、変化している最中の選手に追いつけない。伸びている選手には辛く、落ちている選手には甘い。「ゼロ」は魔法ではなく、伸びている最中の目印でした。
年齢も、階級も、興行の質も測っていません。それらを入れたときにこの差がどうなるかは、ここでは分かりません。この記事は選手についての話ではなく、レートについての話です。
このサイトで無敗の選手の予測勝率を見るときは、表示より上に見積もってください。目安は13.7ポイント。レートの点数ではなく、勝率のポイントです。
ただし、長い連勝を持った既敗の選手にも同じことが起きています(+5.7)。「ゼロ」だけを見るのではなく、「伸びている最中か」を見てください。
測定日:2026-09-26